こんにちは、チャオです。随分と日が経ってしまいましたが、「第17回ペンギンクラブ」で血液内科の先生にお話いただいた内容を書きますね。
今回は奏効とはどうゆうことか、治療効果、今後どうゆうことを目標に治療していくのか等「よりよい治療」についてです。
私が聞いたことを書いていますので、不十分なところや聞き間違い等あり得ます。
疑問やご不明なところなどはみなさまの主治医にお尋ねください。
今回も会でのお話をブログに掲載することを先生には快諾いただきました。感謝申し上げます。
「より良い治療」
―骨髄腫の治療目的―
*より長い安定した状態を保ち日常生活を長く過ごせるか
・骨の痛みの状態、貧血など日常生活の良い状態を保つ
*昔はほとんどいなかったが「治癒」できれば「根治」を目標にしたい
・災害医療センターで10年以上元気で再発しない人、
10%くらいは治っているかもしれない?
・10年前の治療はベルケイド・レブラミドしかない時代で、
現在は9種類の抗がん剤があるのでもっと多くの人が
10年以上再発せず根治状態になり増えると思う
*天寿を全うする(75歳以上の方)
・日本人の平均寿命は現在 男性81歳 女性89歳
・初発が75歳の場合
根治を目指すより平均寿命まで元気で長生きできることが目標
副作用、合併症なく過ごせるようにしていくことを目標に
病気とうまく付き合っていく
・強い治療でも何も副作用が出ない人もいるが、痺れや合併症が出たりしている人
もいるのでその人その人に応じて治療を考えていく。
*副作用は出ないようにしていくことが大切
*治療効果が高いほど長生きできる
・今のところ一番いい状態はsCR(厳密な完全奏効)
―治療効果とは―
*sCRの3つの条件
・免疫固定法でM蛋白を調べM蛋白がでないこと
・骨髄検査で骨髄の中に悪い細胞がみかけられないこと
・FLCが正常化しているもしくはFLC比が正常化していること
この3つがそろっているとsCR(厳密な完全奏効)。
これを目標にしていく。
現在治療法によっては3~4割がこの状態までになっている。
*これに加えて骨髄検査
MRD(微少残存病変)(Euro Flow)方法で
10万個に1つ悪い細胞が入っているか検討し、この検査で陰性だった人は
根治に近いだろうといわれている。
現在保険適応外で近いうちに同じような精度のものが保険適応になる予定。
落ち着いているのであればこの検査をして骨髄の状態をみるとよい。
*なぜ完全奏効がいいのか奏効状態でデータをみてみる
(3年間元気でいられる人)
・sCR(厳密な完全奏効)の場合―――100%に近い
・CR(完全奏効)の場合――――――― 94%
・VGPR(非常に良い部分奏効…蛋白の量が元の値より10%以下になった)場合
(十分効いてはいる)――――――― 80%
・PR(部分奏効…蛋白の量が元の値より50%以下になった)場合
(不十分)―――――――――――― 70%
このデータを見ると蛋白がなくなった人の方が元気でいられる期間が長いので、
最初の治療効果がどうだったのか気にしてほしいし、
副作用なくきちんとした治療を受けてほしい。
また、治療効果が得られている又は維持できていることが大切で完全奏効の
状態をどれくらい維持できるかできるだけ長い時間維持できるようにする。
維持できていないと何らかのかたちで次のステップに進まなくてはいけない。
CRはとても良いが、CRには質(期間をどれだけ維持できているのか)がある。
*CRをどれだけ維持できているのかが大切
・CRになっても維持療法をしていない人ですぐに再発してしまう人がいる
・維持療法では3年維持できている90%の人は再発していないので、
CRの期間を長くすることが大切
・移植後の維持療法は再発防止
できるだけ長くするためにベルケイド、レブラミドなどを飲む
・命にかかわることなので維持療法を行う
*維持療法の薬
レブラミド
完全奏効の率が高くなる(長く飲めば飲むほど)
ベルケイド
高齢者の方のVMP療法で奏効が深まった人に維持療法として使用している
良い状態を長く副作用なしで維持し再発させないためにいかに最初に深い状態に
持っていくか、CRの期間を長く保っていられるかが大切
*再発した場合もう一度CRにもっていく
#症例①
・カイプロリスを3回使用したところで悪いM蛋白がVGPRに入った
・カイプロリスは初期に使うと心臓に負担がかかり長く使えないので
ニンラーロに切り替えて続け、CR状態になった
・FLCも落ち着いている
―検査 免疫固定法とFLC―
*免疫固定法、FLCでは何をみているのか?
・免疫固定法は M蛋白の状態をみている
…Ig-Gなどの蛋白とκ及びλのバンドをみていて治療を進めていくと
この太いバンドが消えていく(効果があった、M蛋白が減った)
この結果をみるときの注意は半減期がある
悪い細胞からできた蛋白は血液中に3~4週間流れているので
1か月前の状態を表している
・FLCは 半減期が時間単位なので今の蛋白状態を表している
したがって、意味合いが違うので免疫固定法とFLCを一緒に行うとよい
<大丈夫と言える>
FLC : 正常
免疫固定法: 陰性
<すぐに蛋白が増えてくるかもしれないと注意をしてみている>
FLC :上がっている
免疫固定法:陰性
・FLCが上がっている場合は病気が悪くなってきているかと身構えている
正常値になっている場合は治療効果が上がったとみている
・FLCの結果をみてすぐに治療の変更はしないが今の状態をみている
免疫固定法も大切だがFLCもあわせて注意してみている
#症例② 治療困難高リスクに対する治療
合併症
(弁膜症・糖尿病・腎機能障害・前立腺肥大・大腸がん・B型肝炎など)
・このような合併症があるときには薬を考慮しながら治療をしなくてはいけないので
合併症に差し障る薬の飲み合わせが難しい糖尿病のある場合は
ステロイドを使用すると血糖値が上がってしまう
前立腺肥大では負担になる薬は使えない
肝炎の場合は免疫を下げすぎると肝炎が暴れてしまう
…再発時の状態…
・Ig-κ値が通常の7倍
・クレアチニン値上昇(腎機能低下)
※CPR(炎症反応)値が感染がないのに上がっている人がいる
骨髄腫細胞の増殖が速い人で薬が効きにくい
・プラズマ形質細胞(悪い細胞)は本来骨髄の中にあるが血管内にあった
※一筋縄ではいかず、VMP療法が効きにくかった
・染色体(FISH法…染色体の悪さをみている)に異常
※染色体1番・13番に異常があるとよくない
…治療…
・VMP療法を行ったが効かずレブラミドだけでは厳しく
PR(部分奏効)までだった
・ベルケイドの維持療法をおこなったが再発
・ダラザレックスでM蛋白が下がりVGPRまでになり現在CRとなる
・中途半端な反応の時には違う方法を選択
・1年半で再発しているのでエムプリシティが使えない
…なぜダラザレックスだったのか?…
・最初ベルケイド、アルケラン、プレドニンが効かずPRまでの状態で、
レブラミドは染色体に異常があるので効きにくい。
Rd療法では太刀打ちできないのでダラザレックスにした
…なぜエムプリシティ(エロツズマブ)ではなかったのか?…
・エムプリシティはダラザレックスと同様の抗体薬で、カイプロリスは違う働き方を
すること、またエンプリシティは初発3.5年以上たっていないと効かないことが
治験等でわかっていて1年半で再発しているので効きにくいのではと考えた
選択肢としてはカイプロリスかダラザレックスになり、
現在の効き目がありそうなダラザレックスを選択
・骨髄検査でCRになり、ユーロフロー(10万個に1つもない)でsCR状態に
なった
再発したとしてもうまく薬を選択すれば非常によく効くことがわかる
・悪い細胞をやっつけてくれる主要免疫が増えてくることも大切で
細胞障害性T細胞が出てくると骨髄腫を強くやっつけてくれる
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)が増えて効いていることがよくわかる
良い細胞も3.5倍に増えた
*副作用が少なく効果がある治療が良い
~とはあるが、簡単な話ではない
その人その人で合わせていかなくてはいけなく、長い間色々な治療を
繰り返しながら5~6種類行う人もいてうまくいく人行かない人も出てくる
できるだけ今ある薬を副作用なくうまくつかっていく
【上手く使っていく薬】それぞれに特徴がある(効かない人や副作用)
・ダラザレックス+レブラミド(DRd)
生存に関してよく完解に入る
・カイプロリス +レブラミド(KRd)
完解に入る率が高い 心臓病の人には使えない
・エムプリシティ+レブラミド(ERd)
CRに入りにくいが副作用は少い
・ニンラーロ +レブラミド(IRd)
・ファリーダック+ベルケイド+レナデックス
血小板減少痺れの副作用等があり最悪な状態になってしまうこともある
完解に入るが毒性が強い
・心臓病ではカイプロリスは使えない。
進行の早い人はレブラミド、エムプリシティはつかえない
・それぞれ特徴があってどれが良いのかなかなかわからないところもあるが
ダラザレックス+レブラミドが一番効きそう(ある人には効かない)
・ダラザレックスの後に他の治療が難しいので
できるなら他の薬を長く使った後に最後に使いたい
・いろいろな治療法ができるようになったから、
どの薬が適応できるのかみながら決めていく
条件が許されるなら副作用少なくマイルドな治療を、
どこに主眼をおいているのか相談しながら決めていく
☆長くなってしまいましたので次回「その2」に続きます☆
チャオ
今回は奏効とはどうゆうことか、治療効果、今後どうゆうことを目標に治療していくのか等「よりよい治療」についてです。
私が聞いたことを書いていますので、不十分なところや聞き間違い等あり得ます。
疑問やご不明なところなどはみなさまの主治医にお尋ねください。
今回も会でのお話をブログに掲載することを先生には快諾いただきました。感謝申し上げます。
「より良い治療」
―骨髄腫の治療目的―
*より長い安定した状態を保ち日常生活を長く過ごせるか
・骨の痛みの状態、貧血など日常生活の良い状態を保つ
*昔はほとんどいなかったが「治癒」できれば「根治」を目標にしたい
・災害医療センターで10年以上元気で再発しない人、
10%くらいは治っているかもしれない?
・10年前の治療はベルケイド・レブラミドしかない時代で、
現在は9種類の抗がん剤があるのでもっと多くの人が
10年以上再発せず根治状態になり増えると思う
*天寿を全うする(75歳以上の方)
・日本人の平均寿命は現在 男性81歳 女性89歳
・初発が75歳の場合
根治を目指すより平均寿命まで元気で長生きできることが目標
副作用、合併症なく過ごせるようにしていくことを目標に
病気とうまく付き合っていく
・強い治療でも何も副作用が出ない人もいるが、痺れや合併症が出たりしている人
もいるのでその人その人に応じて治療を考えていく。
*副作用は出ないようにしていくことが大切
*治療効果が高いほど長生きできる
・今のところ一番いい状態はsCR(厳密な完全奏効)
―治療効果とは―
*sCRの3つの条件
・免疫固定法でM蛋白を調べM蛋白がでないこと
・骨髄検査で骨髄の中に悪い細胞がみかけられないこと
・FLCが正常化しているもしくはFLC比が正常化していること
この3つがそろっているとsCR(厳密な完全奏効)。
これを目標にしていく。
現在治療法によっては3~4割がこの状態までになっている。
*これに加えて骨髄検査
MRD(微少残存病変)(Euro Flow)方法で
10万個に1つ悪い細胞が入っているか検討し、この検査で陰性だった人は
根治に近いだろうといわれている。
現在保険適応外で近いうちに同じような精度のものが保険適応になる予定。
落ち着いているのであればこの検査をして骨髄の状態をみるとよい。
*なぜ完全奏効がいいのか奏効状態でデータをみてみる
(3年間元気でいられる人)
・sCR(厳密な完全奏効)の場合―――100%に近い
・CR(完全奏効)の場合――――――― 94%
・VGPR(非常に良い部分奏効…蛋白の量が元の値より10%以下になった)場合
(十分効いてはいる)――――――― 80%
・PR(部分奏効…蛋白の量が元の値より50%以下になった)場合
(不十分)―――――――――――― 70%
このデータを見ると蛋白がなくなった人の方が元気でいられる期間が長いので、
最初の治療効果がどうだったのか気にしてほしいし、
副作用なくきちんとした治療を受けてほしい。
また、治療効果が得られている又は維持できていることが大切で完全奏効の
状態をどれくらい維持できるかできるだけ長い時間維持できるようにする。
維持できていないと何らかのかたちで次のステップに進まなくてはいけない。
CRはとても良いが、CRには質(期間をどれだけ維持できているのか)がある。
*CRをどれだけ維持できているのかが大切
・CRになっても維持療法をしていない人ですぐに再発してしまう人がいる
・維持療法では3年維持できている90%の人は再発していないので、
CRの期間を長くすることが大切
・移植後の維持療法は再発防止
できるだけ長くするためにベルケイド、レブラミドなどを飲む
・命にかかわることなので維持療法を行う
*維持療法の薬
レブラミド
完全奏効の率が高くなる(長く飲めば飲むほど)
ベルケイド
高齢者の方のVMP療法で奏効が深まった人に維持療法として使用している
良い状態を長く副作用なしで維持し再発させないためにいかに最初に深い状態に
持っていくか、CRの期間を長く保っていられるかが大切
*再発した場合もう一度CRにもっていく
#症例①
・カイプロリスを3回使用したところで悪いM蛋白がVGPRに入った
・カイプロリスは初期に使うと心臓に負担がかかり長く使えないので
ニンラーロに切り替えて続け、CR状態になった
・FLCも落ち着いている
―検査 免疫固定法とFLC―
*免疫固定法、FLCでは何をみているのか?
・免疫固定法は M蛋白の状態をみている
…Ig-Gなどの蛋白とκ及びλのバンドをみていて治療を進めていくと
この太いバンドが消えていく(効果があった、M蛋白が減った)
この結果をみるときの注意は半減期がある
悪い細胞からできた蛋白は血液中に3~4週間流れているので
1か月前の状態を表している
・FLCは 半減期が時間単位なので今の蛋白状態を表している
したがって、意味合いが違うので免疫固定法とFLCを一緒に行うとよい
<大丈夫と言える>
FLC : 正常
免疫固定法: 陰性
<すぐに蛋白が増えてくるかもしれないと注意をしてみている>
FLC :上がっている
免疫固定法:陰性
・FLCが上がっている場合は病気が悪くなってきているかと身構えている
正常値になっている場合は治療効果が上がったとみている
・FLCの結果をみてすぐに治療の変更はしないが今の状態をみている
免疫固定法も大切だがFLCもあわせて注意してみている
#症例② 治療困難高リスクに対する治療
合併症
(弁膜症・糖尿病・腎機能障害・前立腺肥大・大腸がん・B型肝炎など)
・このような合併症があるときには薬を考慮しながら治療をしなくてはいけないので
合併症に差し障る薬の飲み合わせが難しい糖尿病のある場合は
ステロイドを使用すると血糖値が上がってしまう
前立腺肥大では負担になる薬は使えない
肝炎の場合は免疫を下げすぎると肝炎が暴れてしまう
…再発時の状態…
・Ig-κ値が通常の7倍
・クレアチニン値上昇(腎機能低下)
※CPR(炎症反応)値が感染がないのに上がっている人がいる
骨髄腫細胞の増殖が速い人で薬が効きにくい
・プラズマ形質細胞(悪い細胞)は本来骨髄の中にあるが血管内にあった
※一筋縄ではいかず、VMP療法が効きにくかった
・染色体(FISH法…染色体の悪さをみている)に異常
※染色体1番・13番に異常があるとよくない
…治療…
・VMP療法を行ったが効かずレブラミドだけでは厳しく
PR(部分奏効)までだった
・ベルケイドの維持療法をおこなったが再発
・ダラザレックスでM蛋白が下がりVGPRまでになり現在CRとなる
・中途半端な反応の時には違う方法を選択
・1年半で再発しているのでエムプリシティが使えない
…なぜダラザレックスだったのか?…
・最初ベルケイド、アルケラン、プレドニンが効かずPRまでの状態で、
レブラミドは染色体に異常があるので効きにくい。
Rd療法では太刀打ちできないのでダラザレックスにした
…なぜエムプリシティ(エロツズマブ)ではなかったのか?…
・エムプリシティはダラザレックスと同様の抗体薬で、カイプロリスは違う働き方を
すること、またエンプリシティは初発3.5年以上たっていないと効かないことが
治験等でわかっていて1年半で再発しているので効きにくいのではと考えた
選択肢としてはカイプロリスかダラザレックスになり、
現在の効き目がありそうなダラザレックスを選択
・骨髄検査でCRになり、ユーロフロー(10万個に1つもない)でsCR状態に
なった
再発したとしてもうまく薬を選択すれば非常によく効くことがわかる
・悪い細胞をやっつけてくれる主要免疫が増えてくることも大切で
細胞障害性T細胞が出てくると骨髄腫を強くやっつけてくれる
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)が増えて効いていることがよくわかる
良い細胞も3.5倍に増えた
*副作用が少なく効果がある治療が良い
~とはあるが、簡単な話ではない
その人その人で合わせていかなくてはいけなく、長い間色々な治療を
繰り返しながら5~6種類行う人もいてうまくいく人行かない人も出てくる
できるだけ今ある薬を副作用なくうまくつかっていく
【上手く使っていく薬】それぞれに特徴がある(効かない人や副作用)
・ダラザレックス+レブラミド(DRd)
生存に関してよく完解に入る
・カイプロリス +レブラミド(KRd)
完解に入る率が高い 心臓病の人には使えない
・エムプリシティ+レブラミド(ERd)
CRに入りにくいが副作用は少い
・ニンラーロ +レブラミド(IRd)
・ファリーダック+ベルケイド+レナデックス
血小板減少痺れの副作用等があり最悪な状態になってしまうこともある
完解に入るが毒性が強い
・心臓病ではカイプロリスは使えない。
進行の早い人はレブラミド、エムプリシティはつかえない
・それぞれ特徴があってどれが良いのかなかなかわからないところもあるが
ダラザレックス+レブラミドが一番効きそう(ある人には効かない)
・ダラザレックスの後に他の治療が難しいので
できるなら他の薬を長く使った後に最後に使いたい
・いろいろな治療法ができるようになったから、
どの薬が適応できるのかみながら決めていく
条件が許されるなら副作用少なくマイルドな治療を、
どこに主眼をおいているのか相談しながら決めていく
☆長くなってしまいましたので次回「その2」に続きます☆
チャオ