萩咲く

むさしのの秋は 萩の花から来る

あるか なきかの風にゆれつつ
小さい葉裏をかえす
このしなやかなる枝をみよ

萩は
さからわず
一切を 天地にまかせて
かく 美しく 花ひらく

竹内てるよ
「静かなる夜明け」より


今年の5月の連休に久しぶりに田舎の母を見舞った。
母は今年で96才になった。
久しぶりに会う母は足が以前よりも不自由になったが、頭はしっかりとしていて、
顔の表情はますます穏やかでやさしくなった。

母となにげない会話を、なにげなく交わせる喜び。
遠い日の思い出を追う時、母と私の耳には、あの頃と同じ風が吹き、
同じざわめきや波の音、にぎやかな子ども達の声が聞こえるのだ。

母は造り酒屋に嫁ぎ、若い頃から杜氏さんや蔵男衆など、沢山の人達のお世話をしてきた。
娘から見ても人の出入りの多い家は、さぞかし苦労が多かったと思うが、
母は母のしなやかさで全ての事を受け入れ、苦労から逃げることなく4人の子供を育てた。
母からしなやかさを受け継ぐことが出来なかった娘は、
幾つになってもゴツンゴツンとあちこちぶつかりながら生きているが、
96才の母は「ありがとう、ありがとう」と目を細めながら、
みごとに、そしてしなやかに生きているのである。

にゃん吉